『経絡治療』肝虚証とは

経絡治療には大きく別けて四つの証に分類されます。
その一つが肝虚証です。

目次

肝虚証って何?

東洋医学的な考え方で肝は『血の貯蔵タンク』として捉えています。
肝に血が沢山あれば活動も活発になり、物事の判断や寝付きも良くなります。
その血が消耗しすぎて足りなくなってきてしまうと先ほどとは逆の症状が出てきます。
この様に肝は血と密接な関係にあります。
よって『肝虚証=血虚』ということになります。
肝虚証ではまず『肝虚熱証』と『肝虚寒証』に別けられます。

肝虚熱証について

肝虚熱証は主に血虚(陰である津液の虚)が主体となります。津液が虚することによって熱が発生します。これは血の陰に属している津液が身体を冷やすラジエーター水の役割を持っているからです。
本来動いて発生した熱を津液が抑えることによって正常に機能しているのですが、津液が虚することによって発生した熱を抑えられなくなってしまいます。
その状態を『肝虚熱証』と呼びます。

その結果、発生した熱が身体中に悪さをすることにより症状として現れるのです。
この発生した熱を虚熱と呼びます。
例でいうとその虚熱が腰にいけば腰痛に、頭にいけば頭痛になります。

肝虚寒証について

次に肝虚寒証についてです。
肝虚寒証』は先ほどの血虚(陰である津液の虚)に+陽虚(陽である栄気の虚)が加わり血そのものが少なくなった状態です。

血は身体を動かすガソリンみたいなものなので、過酷な労働や大量に出血した場合に血が少なくなります。
ガソリンが無くなることによって燃やすものがなくなり熱の勢いが徐々に衰え冷えの症状が増えてきます。
そうなってしまうと、身体を温めたり活動する力がなくなってしまいます。
その結果、倦怠感や無気力、冷え性や下痢といった冷え症状が現れるのです。

肝虚証で現れる症状について

血虚により発生した寒熱が、身体の何処かで停滞した場合に病証が現れます。
大きく別けて3つに分類されるのでその一部を書き出しておきます。
※必ず肝虚証でないと病証が現れない訳ではありませんのでご注意ください。

肝と肝経の病症

経絡関連病証

  • 頭痛
  • 立ち眩み
  • めまい
  • 難聴
  • 癲癇
  • 舌が動きにくい
  • 腰痛
  • 胸脇部、側腹部、鼠径部にかけての引きつりや痛み
  • 筋肉の引きつりや麻痺や震え
  • 婦人科系疾患

など

臓腑関連病証

  • 怒る
  • 恐れる
  • 狂言
  • 蕁麻疹
  • 鼻出血
  • 身熱
  • 横になりたがる
  • 精力減退
  • 糖尿病
  • 胸苦しい
  • 吐き気がして心窩部が詰まる

など

経筋関連病証

  • 足の親指のツッパリ感
  • 内踝前方の痛み
  • 膝内側の痛み
  • 内股の痛みと引きつり
  • 性機能障害

など

鍼処経灸堂 院長 藤田和喜

用語集

虚する…少なくなる、減少する、弱くなる
血…陰に属し、その中でも陰である津液と陽である栄気から作られる
津液…体内の水分の総称、身体を構成するもの、血にも含まれる
栄気…血を巡らせたり、身体を温めるもの、
肝血虚…血の中の陰である津液が虚した状態
肝陽虚…血の中の陽である栄気まで虚した状態

参考資料 図解よくわかる経絡治療講義 大上勝行
     日本鍼灸医学 経絡治療学会